不動産の基礎知識

2011-12-16

『城東地域が「東北縦貫線」でよみがえる?』

■神田の上空を電車が駆け抜ける

JR神田駅の山手線・京浜東北線ホームのすぐ横を、東北新幹線の線路が通っ

ています。最近この新幹線の線路の直上に、見上げるような高さの高架線が築

かれつつあるのを目にされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

これは「東北縦貫線」と呼ばれている新しい線路の建設工事で、現在上野駅が

終着となっている東北線(宇都宮線)・高崎線・常磐線の3線を東京駅へ延伸

し、東海道線と直結させようとしているのです。

 

この区間には元々列車回送用の線路があったのですが、神田駅付近に限っては、

そのスペースを東北新幹線の延伸に使用してしまったため、今回このような重

層高架の建設という大がかりな工事が必要となっているわけです。

 

大都市鉄道における既存路線の改良や新線建設に対しては、鉄道会社の資金の

ほかに、国や自治体からの各種補助金が充当される場合が多いのですが、東北

縦貫線の総事業費約400億円は全額JR東日本の自己負担です。

 

しかし、この路線の開通に伴って予想される様々な影響を考えると、自腹を切

ってでも早期に着手・開業するだけの効果は充分に得られるものだと言えそう

です。

 

■開業による効果

完成後、上記3線は東海道線と直通運転をすることになり、北関東方面から東

京駅・品川駅を経由し横浜・湘南地区へ、列車が通しで走ることになります。

 

これにより、まず並行する山手線・京浜東北線の混雑緩和が期待できます。

特に朝ラッシュ時は、上記3線の乗客が上野駅で山手線・京浜東北線に乗り換

えて東京駅方面へ向かうため、首都圏トップクラスの混雑率となっています(※1)。

 

また、乗換えが不要となることで各ターミナル駅の混雑も緩和されるほか、乗

り換え時間や停車駅の減少により、上野以北の区間から品川駅までの所要時間

は約11分程度短縮される見込みです。

 

品川駅は2027年に開業が予定されるリニア中央新幹線の始発駅となる予定(※2)

ですので、東北縦貫線が首都圏北部からリニア中央新幹線へのアクセスを向上

させる役割も果たしそうです。

 

■さらなる再開発構想も

メリットは乗客側だけではありません。

鉄道会社にとっても、現在は上野・東京の両ターミナルで折り返し運転をして

いる車両を、滞留することなく通し運転できるようになることで、車両の運用

効率を高める事ができ、労力やコストを減少させることが可能です。

 

さらに、上野以北と東京以南に分断されている線路が繋がることで、南北に分

かれている車両基地の一体的再編が可能になり、都心に大きな開発スペースを

生み出すことが期待されています。

 

現在、品川駅の北側から田町駅付近にかけて、約20ヘクタールに及ぶ広大な車

両基地が置かれていますが、再編整理により十数ヘクタールの敷地が開発可能

になる見込みです。

 

既に両駅間には新駅設置の構想も囁かれ始めており、都心に残された数少ない

大型再開発となりそうです。

 

■よみがえるか東側

バブル期以降、都庁移転と新宿の副都心化、各種再開発により、都心は西側へ

移っていく傾向にありました。また古くからの山の手イメージと相まって、

「住みたい街ランキング」などでも城西・城南地区が城東・城北側を凌駕して

きました。

 

しかし、近年つくばエクスプレスの開業やスカイツリーのオープンといった明

るい材料により、賃貸市場でも城東地区が再び注目を集めてきました。

 

今後「東北縦貫線」が、城北地区から城東・城南地区のターミナルを有機的に

結ぶ大動脈となることにより、この動きが更に加速してゆくことを期待したい

と思います。

 

 

(※1)国土交通省「三大都市圏における主要区間の混雑率」(平成22年度)

による、京浜東北線上野→御徒町間の混雑率195%

 

(※2)JR東海発表資料「交通政策審議会で説明する試算結果等について」

(2010年4月28日)

 

(※3)JR東海発表資料「中央新幹線(東京都・名古屋市間)計画段階環境

配慮書 第4章事業実施想定区域および概略の駅位置の選定」(2011年6月7日)