不動産の基礎知識

2011-10-08

『タバコとマンション経営についての考察』

先日は、就任早々の小宮山洋子厚労大臣のタバコ一箱700円発言が騒動にな

っていました。また、昨年10月1日の超大型タバコ増税から、ちょうど1年

が経過しました。

 

増税直後は禁煙が大ブームになりましたが、結局6割の人が失敗したとの統計

も出ています。それを裏付けるように、タバコの販売数量は増税以前の水準に

ほぼ戻っています。

 

今回は、何かと騒がしい、そんなタバコとマンション経営に関するお話をさせ

ていただきます。

 

賃貸マンションにおいて、ご入居者が退去する際の原状回復について、オーナ

ー様とご入居者の負担割合の問題は通常でもデリケートなテーマとなりますが、

更にペットや喫煙といった要因が加わってくる場合はなおさらです。

 

それでもペットの場合は、貸し手も借り手も、お互いに特殊な条件だという認

識を共有しているケースが多いので、入居段階で特約を明確に確認しあったり、

敷金を多めに設定したりするなど、トラブルを最小限にする工夫がなされてい

ます。

 

それに比べタバコの場合は、ルール化がもう一つスッキリしていない感じがあ

ります。

 

東京都では、「賃貸住宅紛争防止条例」に基づく原状回復や入居中の修繕など

に関しての基本的な考え方をまとめて公表していますが(いわゆる「東京都ル

ール」です)、そもそも「賃貸住宅紛争防止条例」自体が、宅建業者への説明

責任を定めたものであり、これだけで原状回復の負担割合が明確になるという

ことでもありません。

 

したがって、実際には退室の立会の現場で、ご入居者と賃貸管理会社(または

オーナー様)が個別に交渉しながら折り合いをつけているわけです。

 

その交渉に備えるために、ご入居者も煙が室内に蔓延しないよう、喫煙場所を

キッチン(換気扇の下)のみに限るとか、ホタル族と言われるように、バルコ

ニーのみに限るといった対策をとられるケースも多く見られます。

 

しかし、ちょっと余談ですがこんな事故もありました。

普段バルコニーで喫煙をされていた方が、近所に買物へ出かけられた時のこと

です。戻ってみるとマンション前に人が集まり、バルコニーで爆発があったと

騒いでいる方が走りまわっていました。

 

見上げてみると、自分の部屋が火柱と煙で見えなくなっており愕然としたそう

です。現場検証によれば、エアコンの室外機の上に置いていた灰皿のタバコの

不始末が原因で、室外機が爆発したらしいのです。

本人は、賠償問題など大変なことになってしまうと頭を抱えたそうです。

 

結果的には、管理組合、ご入居者、オーナー様、それぞれの加入していた保険

が適用され、火災を起こしたご入居者の方にも、保険からお見舞金が出たとの

ことでした。

 

人的被害が無かったのと、物的損傷も保険でカバーできたことは不幸中の幸い

でしたが、皆様、特に非喫煙者の方々が大きく眉をひそめるエピソードには違

いありません。

 

また、私たち業者からも、そもそもバルコニーは共用部分であり、爆発まで至

らなくても防災上も大変危険であり、煙の流入など隣接するお部屋にも迷惑で

すので、直ちに止めていただくようお願いしたいと思います。

 

さて、なかなか明快な結論とならないのがタバコ問題ですが、やはりルールの

明確化と十分な事前説明が私たち業者の役割であることは間違いありません。

 

その上で、今後の展望を想像してみますと、嫌煙派の方々からすれば喫煙者な

ど早くゼロになればいいというお気持ちでしょうが、先述の禁煙失敗の例でも

分かりますように、ここまで浸透している嗜好品愛好者がゼロになるというの

は難しいことです。

 

したがって、ビジネス的には一定数の喫煙者は今後も存在することを前提に考

えるべきなのでしょう。飲食店などでも禁煙を売りにするところが増えたかと

思ったら、逆に喫煙可のところが出てきて人気になったりもしています。

 

マンションでも禁煙または喫煙可といったコンセプトを打ち出して、それをア

ピールする手法が出てくるかもしれません。禁煙マンションはそれを打ち出す

だけでいいかもしれません。

 

喫煙マンションの方でも、共用部分などでも心地よい雰囲気でタバコが吸えて、

コミュニケーションなども高まり、しかも誰にも迷惑をかけない、そんなデザ

インが描けないでしょうか。

 

維持コスト的にも前者は家賃が安く、後者は多少高い家賃が取れる、といった

経済条件面のバランスも図りながら・・・