不動産の基礎知識
2012-04-20
“憧れ”と“現実”のあいだ~2012年住みたい街ランキングの雑感
4月に入り2週間以上が経ち、繁忙期の余韻が残っていた賃貸市場も少しずつ
落ち着きを見せてきました。当グループの賃貸管理会社の様子を見ていても、
あれほど慌ただしかった3月が嘘のように粛々と仕事をこなしています。
賃貸部の担当者は、今年の繁忙期は、昨年の震災の影響による賃貸市場低迷の
反動からか、震災前よりも状況が良かった(動きが出ていた)と言っています。
では、昨年の震災から1年以上経ち、入居者の住まいに対する考えはどのよう
に変化したのでしょうか。
毎年恒例の「2012年住みたい街・住んで良かった街ランキング」が、2月
28日に東京ウォーカーで発表されましたので、このランキングから震災が入
居者に与えた影響を見てみましょう。
まず、ランキングをご覧ください。
本誌では各30位までのランキングを発表していますが、ここではそれぞれト
ップ10の街をご紹介いたします。
■住みたい街ランキング(カッコ内は昨年順位、10位以下は-と表記)
1位 吉祥寺 (1)
2位 下北沢 (2)
3位 中野 (10)
4位 自由が丘 (4)
4位 高円寺 (-)※同数4位
6位 中目黒 (8)
7位 恵比寿 (3)
8位 三鷹 (-)
9位 池袋 (6)
10位 新宿 (5)
■住んでよかった街ランキング
1位 吉祥寺 (3)
2位 中野 (1)
3位 三鷹 (-)
4位 浅草 (-)
5位 立川 (10)
6位 西荻窪 (-)
7位 八王子 (-)
8位 赤羽 (-)
9位 荻窪 (-)
10位 池袋 (-)
「住みたい街」では、吉祥寺が2005年から7度連続で1位を獲得していま
す。今年はさらに「住んでよかった街」でも1位となっていますので、見事W
受賞という安定した強さを見せています。また、吉祥寺人気の影響からか、隣
駅の「三鷹」が両ランキングで順位を急上昇させており、ともにトップ10に
名を連ねています。
震災の影響はどうでしょうか。
両ランキングともに顕著な結果が出ており、中央線沿線の街が「住みたい街」
は2つ、「住んでよかった街」は4つ、ランク外からトップ10に入ってきて
います。
さらに11位以下を数えると「住んでよかった街」ランキングには、中央線の
駅名が30位以内に13駅も入っているという結果が出ています。これは中央
線沿線に“地盤が強いイメージ”があるからだと思われます。
もともと「住みたい街ランキング」は、毎年西高東低の様相を呈していますし、
中央線沿線は人気の高いエリアですので、それほど驚くようなランキングでは
ないのですが、「立川」が5位、「八王子」が7位にランクインしたのは、ま
さに震災の影響だと言えるのではないでしょうか。
では、「今後投資対象エリアとして立川や八王子を入れるべきなのでしょうか?」
この質問に私たちは「否」とお答えします。
その理由は「住んでよかった街」と「住みたい街」の両ランキングを見比べる
とよくわかります。
この2つの街は、「住んでよかった街」では上位にランキングしていますが、
「住みたい街」では、立川は28位、八王子は圏外となっています。
実際に住んでいる人たちには快適であっても、他のエリアに住んでいる人たち
からは特に住みたいと思われるエリアではないということです。
たしかに「住んでよかった街」は、街のレベル(生活環境、快適性)を計る上
でひとつの指標になるとは思いますが、賃貸需要をしっかりと見定めるために
は、「住んでよかった街」「住みたい街」の両ランキングを参考にする必要が
あります。
当然のことですが、住みたいと思われるエリアじゃなければ人は集まらないで
すし、住んでよかったと感じられる街でなければ、徐々に人は離れていってし
まうからです。
「住みたい街」は入居者からの“憧れ”を表していて、「住んでよかった街」
は入居者が感じた“現実”を表しています。
この“憧れ”と“現実”が同居しているエリアが、賃貸経営をする上で最も優
位な場所であり、長期に渡り安定した収益が見込めるエリアだと思います。
以前からメルマガやセミナーでもお伝えしていますが、
賃貸の強いエリア=【賃料】×【利便性(立地)】×【生活環境】
のバランスだと考えます。
“現実”はこの【賃料】×【利便性(立地)】×【生活環境】に当たると思い
ますので、ここに“憧れ”をプラスした方程式が本当に賃貸需要の強いエリア
と言えるのではないでしょうか。