不動産の基礎知識

2012-03-30

不景気になるとオーナーが儲かる?~社宅保有率と都心の賃貸需要の関係性

企業にとって、社員の働きやすい環境を整備・用意することは、人材の確保・

定着を図る上で欠かせないことですが、最近では「使いやすい福利厚生制度を

作る」という動きが出てきているようです。

 

バブル期によく見られたいわゆる贅沢品である企業の保養所などは、投資に見

合った効果が得られないことから、既に負の遺産として処分されてしまってい

ることは周知の事実です。

 

しかし、これ以外にもサラリーマン・OLの方にとってごく身近な存在である、

寮や社宅も徐々に処分されてきているのです。

 

3月29日付のニュースで、民間企業大手の日立製作所が以下の内容で福利厚

生制度を見直しすると発表がありました。

 

・全国に4000戸ある社宅数を、2015年度までに4分の1の1000戸

に減らす

・寮への入居期限を大卒は8年から5年に、高校卒は12年から9年に短縮

 

一方で社員への住宅手当を今年の4月から手厚くし、現行手当に比べ最大2倍

まで増額するとのことです。この一連の取り組みにより、2018年度には約

15億円のコストが圧縮できるようです。

 

このように、自社保有している社宅や寮を処分・整理する企業はかなり増えて

きています。

 

財団法人労務行政研究所の調査によると、1990年頃には70%ほどの上場

企業が社宅・独身寮を保有し、社員への福利厚生の一環として提供していまし

たが、不動産を維持・管理していくコストを省くために、2000年以降はか

なりの数の社宅・独身寮が廃止されているとのことです。

 

また、これらの企業も日立製作所と同様に、代わりに住宅手当を出したり、も

しくは借り上げ社宅に社員を住ませたりといった形で対応しているようです。

 

中には、このような流れに逆行し、社宅・寮制度を充実させることで、他企業

との差別化を図る企業もあるようですが、やはり管理・保有コストの高い不動

産を処分することで経営を安定させたいと考える企業の方が多いというのは、

デフレが続く今の時代においては必然的な流れなのではないでしょうか。

 

また、郊外の寮が廃止になったことで、通勤に便利な場所で新しく設備の整っ

たマンションに住めることが売りになり、就職人気が上がったなどという話も

あり、企業にとっては社宅・寮を廃止してコストダウンが図れただけでなく、

社員の満足度が高い福利厚生を提供できるようになったという利点もあるよう

です。

 

このような社宅・寮廃止の流れは、都心でマンションを貸しているオーナーに

とってもかなりの追い風が吹いていると言えるのではないでしょうか。

 

当グループで管理している物件を見るだけでも、法人契約の割合は徐々に増え

てきていますし、個人で契約されている入居者も、社宅がない代わりに家賃補

助が出ることによって、場所の良い都心のマンションに住むことができるとい

う方が増えてきています。

 

また、少し前になりますが、羽田空港のハブ化にともない、ある航空会社が空

港近くのマンションを社員寮として1棟まるまる借り上げたという話もありま

した。

 

企業からすれば、社宅保有・管理コストを削れた分、会社から近い都心部の物

件を借り上げることができますし、個人の入居者からしても、家賃補助が出る

のであればより良い場所に借りたいと思うのが普通です。

 

この『社宅・寮廃止→法人契約or家賃補助』という流れは、都心部の賃貸物件

の賃貸需要を徐々に上昇させていくと考えられます。

 

また、法人契約であったり、家賃補助が出ている個人の契約であったりするこ

とは、初期費用がしっかり取れるという面や、家賃滞納リスクが低いという面

などからしてもオーナーにとってかなり有利です。

 

今後もし景気が良くなっていったとしても、過去の右肩上がりの時代のように

企業が再度社宅や寮を自社で抱え込むとは思えません。ということは、このオ

ーナーにとって非常に有利な状況は今後も続くと考えられます。

 

マンション経営においては、単なる数字上の計算をするだけでなく、このよう

な時代の流れを敏感に捉えた上でどのエリアにどのような物件を持つべきかを

考えることが、成功への近道になるのではないでしょうか。