マンション投資のポイント
2016-05-07
『ヴィンテージマンション』からみる不動産の価値基準
投資マンションへの需要はいまだ衰えることがありませんが、
日経平均株価の下落や追加金融緩和の見直しなど、投資環境は
徐々に変わりつつあります。
ご存知の通り、不動産投資は景気に左右されにくい投資法です。
経済動向がプラスに働くことはあっても、マイナスを被ること
はほとんどありません。
浮き沈みの激しい経済動向の影響を受けにくいため、忙しい
サラリーマンにとって長期安定的に運用できる不動産投資は、
非常に魅力的な投資法と言えます。
しかし、全ての不動産が長期安定的に運用できるわけではありません。
投資目的や投資方法が異なれば、優先するべき項目は当然
異なりますが、「長期安定的に運用する」ためには欠かせない
要点が1つだけあります。
それは、「立地」です。
不動産投資は20年30年の長期戦です。
20年、30年、40年と年数を経たとしても賃料水準が下がらず、
資産価値を維持することが重要な要素となってきます。
そこで今回は、その代表選手とも言える『ヴィンテージマンション』
を例に「立地」の重要性について考察します。
ご存知の方も多いと思いますが、『ヴィンテージ』とは元々、
ぶどうの収穫が量・質ともに良かった年代のワインを指す言葉として
使われ、それがヴィンテージギターやヴィンテージカーなど、
分野を問わず使われる言葉となりました。
『ヴィンテージマンション』に明確な定義はありませんが、
不動産専門の情報サービス会社である東京カンテイは、
下記のように定義づけています。
「一定の期間を経過しても価値が変化せず
高い水準を維持している高級マンション」
では実際、どのような物件が『ヴィンテージマンション』と
言われているのか、本当に資産価値を維持できているのかを
直近の売買事例と東京カンテイのデータを参考に検証してみます。
事例① コープオリンピア
交 通 :JR『原宿』駅 2分/東京メトロ『明治神宮前』駅 1分
住 所 :渋谷区神宮前6-35-3
竣 工 :昭和40年3月(築52年目)
面 積 :27㎡台~187㎡台
間 取 :1R~5LDK
戸 数 :171戸
分譲時価格:3,000万円台~10,000万円台
≪直近の売買事例≫ ※()内は売買年月次
1R 空室 54.96㎡ 7,880万円(平成28年3月)
1R 賃貸 27.54㎡ 3,950万円(平成28年3月)
事例② 広尾ガーデンヒルズ
交 通 :東京メトロ『日比谷』駅 5分/東京メトロ『六本木』駅 14分
住 所 :渋谷区広尾4-1
竣 工 :昭和59年1月(築32年目)
面 積 :53㎡台~362㎡台
間 取 :1LDK~4SLDK
戸 数 :1,181戸
分譲時価格:8,000万円台~49,000万円台
≪直近の売買事例≫ ※()内は売買年月次
2LDK 居住中 88.98㎡ 13,200万円(平成28年3月)
2LDK 空室 67.45㎡ 9,920万円(平成27年11月)
不動産に限らず、物の価値は経年を重ねるにつれて価値が落ちて
いくと考えられていますが、どちらの物件も売買価格が落ちて
いるというよりも、少し上がっている印象を受けます。
築30年、40年も経っているにも関わらず、
なぜ高値を維持できているのでしょうか。
東京カンテイが2009年10月と2015年12月に
ヴィンテージマンションについての調査を行っていますので、
その調査結果を参考にして見ていきます。
2015年の調査では、2009年・2015年ともにヴィンテージマンションと
認められた“ヴィンテージ維持”(坪300万円以上)とヴィンテージ
マンションだったが、2015年はヴィンテージマンションの定義から外れた
“ヴィンテージ落ち”(坪300万円以下)の二つに分けられています。
『ヴィンテージマンション』と認められたら、未来永劫
ヴィンテージマンションでいられるわけではないようです。
では“ヴィンテージ落ち”と評価された物件は、
なぜ価格が下落してしまったのでしょうか。
要因として「価格と賃料による違い」「立地による違い」「築年による違い」
が挙げられていましたが、今回は「価格と賃料による違い」と「立地による
違い」に焦点をあてていきます。
“ヴィンテージ維持”物件の平均坪賃料が12,920円に対して、
“ヴィンテージ落ち”物件の平均坪賃料は10,601円と1.22倍
の差があり、収益力に差が生じているのは一目瞭然。
“収益力”という点で価値が目減りしているようです。
それを裏づけているのが事例②で紹介した
広尾ガーデンヒルズの募集賃料です。
3LDK 83.34㎡ 賃料500,000円 礼金2ヶ月 敷金2ヵ月
2LDK 91.55㎡ 賃料530,000円 礼金1ヶ月 敷金3ヶ月
都内の新築・築浅の高級マンションやタワーマンションの上層階と
負けず劣らずの賃料・条件で募集されているうえに、総戸数1181戸
に対して空室は10戸程で、コープオリンピアも同じような状況です。
日本において、不動産価格の算出方法は収益還元法(投資物件に限らず)
が主となっていますので、極端な言い方をすれば、
賃料水準が下がらない=価格(価値)が落ちないと言えます。
そして、その収益性を支えているのが「立地」です。
“ヴィンテージ維持”物件が8区(港区・渋谷区・千代田区・世田谷区
新宿区・品川区・大田区・目黒区)にしか立地していないのに対し、
“ヴィンテージ落ち”物件はやや広く10区(港区・世田谷区・渋谷区・
目黒区・新宿区・品川区・大田区・文京区・杉並区・千代田区)に跨って
いるうえ、ヴィンテージマンションが多い行政区の“ヴィンテージ落ち”の
シェアが低く、港区で言えば20物件が数えられているものの、42物件が
“ヴィンテージ維持”となっています。
事例①で紹介したコープオリンピアは、人気駅である原宿駅2分・
明治神宮前駅1分の立地で、尚且つマンション自体が他にないため、
需要が供給を圧倒的に上回り、賃料を下げる必要がありません。
同じ不動産である限り、ヴィンテージマンションであろうと
ワンルームマンションであろうと、その価値基準に変わりはありません。
そして、立地(特に駅や路線、駅からの距離 等)は
その後の資産性に大きな影響を与えます。
東京都内だけでも数多くの不動産が売買されています。
どの物件を購入しようか迷うこともあるでしょう。
「立地」を筆頭に、優先順位をしっかりと決めたうえで
物件選びに臨んでください。