不動産の基礎知識

2011-07-23

『原状回復ガイドラインの再改訂について』

新聞やニュース等で取り上げられたので、ご存じの方も多いと思いますが、原

状回復のガイドライン※が、8月に再び改訂される予定です。今回はその再改

訂案のご紹介をさせていただきます。

※再改定案は国土交通省のホームページに掲載されています。

 

現在のガイドラインによって、契約時に部屋の傷などを確認して、借り手がど

のような場合に費用を負担するかなどの原則が既に提示されてはいますが、そ

の後も当事者間で文書を交わさないケースが多く、トラブルは減っていないの

が現状のようです。

 

このため今回の改訂で国交省は、

「入居の際、退去時の費用に関する文書も交わせば、貸手、借り手にとって明

確な基準になり、トラブルも減るはず」

とみており、フローリングや壁の傷、汚れなど具体的な事例を下記のように列

挙して、貸し手と借り手のどちらが負担するかを単価とともに文書で取り交わ

し、契約書に添付するよう求めています。

 

▼主な貸主負担例

・家具による床、カーペットのへこみ

・日焼けした畳・壁クロスの修繕

・壁の画びょう跡などの補修

・エアコンの内部洗浄  など

 

▼主な入居者負担例

・不注意による畳の色落ち

・清掃を怠った風呂のカビ

・壁のねじ穴

・落書き  など

※クロスについては、喫煙による変色や換気で除去できない臭いが付いたケー

スは「通常の使用による損耗を超えると判断される場合が多い」と指摘して、

入居者の負担としています。

 

また、入居者責任がある設備の損傷などでも、経年変化がある場合は貸主も一

部負担はしますが、関連税制の改正に伴い再改訂案は、6年以上経過したクロ

スや畳の補修は入居者の負担を10%からほぼゼロに改めるなど、契約年数に

応じた入居者負担の割合を見直しています。

 

今回の改訂は、現在も原状回復に関するガイドラインを設けているものの、ガ

イドライン自体に強制力が無いために、その後も敷金・保証金等の返還、原状

回復、管理業務を巡るもの等多様な問題が発生し続けている現状を受け、再度

ルールの見直し等の必要があるとの意見が出てきたからです。

 

現在のような情報化社会では、自分なりに調べて退去時の立会に臨まれる入居

者が増えているため、借主負担なのか、貸主負担なのか、修繕費用の負担割合

について意見が食い違うケースは多々あります。

 

そうしたトラブルを回避するため、この度のガイドラインの再改訂では、事前

にお互いの負担割合を明確に確認してから契約をしましょうと、以前よりも詳

細に及ぶ指針を示しているのですが、私どものグループではさらなるトラブル

回避策として、社内に工事部を設置し、専門スタッフが立会業務から内装工事、

最終チェックまでを一貫して行うというシステム作りにも力を入れております。

 

社員が立会業務を行う、当たり前のように思われるかもしれませんが、多くの

賃貸管理会社は社内に専門スタッフを抱えていないため、退去時の立会から工

事完了までの業務を社外の内装業者に任せているケースが多いのです。

 

社内に工事部を設置することによって、専門スタッフが迅速な対応や明確な説

明をすることでトラブルが回避できるというだけでなく、内装工事自体のコス

トを削減できることで、貸主、入居者双方の負担を減少できるというメリット

もあります。

 

原状回復のガイドラインは8月の上旬には再改訂されそうです。しかし、ガイ

ドラインが改訂されても、結局は強制力がないために退去時の立会トラブルが

劇的に減少することはないでしょう。

 

当グループは、貸主、入居者、双方が納得して貸して(住んで)いただけるよ

うに、また、双方にとってメリットがあるように、ガイドラインに留まらない

トラブル回避策に今後も取り組んでまいりたいと思っております。