不動産の基礎知識
2011-02-25
『マンション経営の節税効果を考える!』
先週の16日(水)から、確定申告の受付が始まりました。
給与所得の方はもともと源泉徴収によって税金を納めていると思いますが、マ
ンション経営を始めて不動産所得を得た場合、給与所得と合算して申告するた
め確定申告をすることになります。
合算する不動産所得が赤字の場合、課税所得が下がることになり、既に納めて
いる所得税の還付を受けたり、6月から住民税の減税を受けることができます。
※住民税は前年度の所得に対して課税されるため、還付ではなく減税となりま
す。
不動産所得が赤字になる場合があるのは、マンションを賃貸に出した場合入っ
てくる不動産収入(家賃)に対し以下のような経費を差し引くことができるか
らです。
・住宅ローンの金利(建物部分のみ)
・減価償却費(帳簿上の経費)
・管理費、修繕費
・各種税金(固定資産税、不動産取得税など)
・購入時にかかった経費(登記費用、ローン諸費用など)
・その他不動産事業にかかった経費
イメージがしやすいよう、以下にその一例を挙げてみます。
(数字はざっくりとしたものです)
■物件購入条件
築年数:10年
価格:1500万円(建物価格830万、土地価格670万円)
頭金:80万円
ローン金額:1420万円
金利:3%
ローン年数:30年
賃料:月々8.5万円(年間102万円)
上記経費一覧合計:年間212万円
※減価償却費の設備は定率法で計算しています。
■年間収支
家賃収入(102万円)- 経費(212万円)
= 不動産所得(-110万円)
■家族構成
夫:サラリーマン(年収600万円)
妻:専業主婦
子供:2人(小学生)
購入前課税対象額:273万円(所得税)287万円(住民税)
購入後課税対象額:163万円(所得税)177万円(住民税)
※課税対象額 =「収入」-「給与所得控除」-「所得控除の額の合計」
購入後課税対象額の計算方法は、購入前課税対象額から-110万円(不動産
所得)を合算したものです。
マンション購入前の税金:
17.6万円(所得税)+ 28.7万円(住民税)= 46.3万円
マンション購入後の税金:
8.1万円(所得税)+ 17.7万円(住民税)= 25.8万円
46.3万円(マンション購入前)- 25.8万円(マンション購入後)
= 20.5万円
節税額:約20.5万円
※上記の参考例は、1月1日に所有した場合の初年度の計算例です。
ここで気を付けていただきたいのは、マンション経営におけるこのような節税
メリットは年々減少していく、ということです。
初年度は購入時にかかる費用(登記費用、ローン諸費用など)の他、不動産取
得税などを経費として申告できますが、もちろん2年目以降はこれらの経費は
申告できません。
さらに、減価償却費、住宅ローンの金利は年々減少していきますので、申告で
きる経費は年々減少していくため節税額も減少していきます。
つい先日のことですが、売却の相談を受けたお客様から節税について以下のよ
うなお話を伺いました。
そのお客様は8年前に、
『毎月は1万円の持ち出し(家賃からローン返済額と管理費等を差し引いた額)
になるけれど、確定申告をして戻ってきた税金で年間の収支をプラスにして運
用しましょう』
というプランを営業マンから提案され、特に検証もしないままマンション経営
を始められました。
所有して3年目位まではある程度の税金が戻ってきたため、年間収支がプラス
になっていたそうですが、4年目、5年目と年が経つほどに目に見えて節税効
果が減り、年間収支はかろうじてプラスになる程度になってしまい、現在では
マイナス運用という状況に陥ってしまったそうです。
当時、担当の営業マンからは節税の金額が年々減っていくという説明がなく
(逆にずっと節税が続くという説明もない)、現在は毎月の負担に嫌気がさし
ているので売却してしまいたいとのことでした。
このお客様が所有されている物件は新宿区にあり、駅からも徒歩5分という好
立地ですし、家賃も下がらず安定しているようで、物件は全く悪くありません。
しかし、担当の営業マンから聞いていた話と、現在の状況があまりに違いすぎ
るため、所有し続ける目的を失ってしまい、結果的にご自身の負担をいとわず
に売却することになってしまいました。
マンション経営には様々なメリットがあり、節税効果も一つのメリットではあ
ると思います。
ただ、節税を目的にしてプランを立ててしまうと、上述のお客様のように長期
の運用としては考えられなくなってしまい、当初の計画とずれが生じることで
失敗したと感じ、慌てて売却をして損をしてしまう方が結構いらっしゃいます。
キャピタルゲインが考えられない今、マンション経営は長期運用することでそ
の効果が現れるものだと考えます。
短期的な視点ではなく長期的な視点でマンション経営を考え、始めていただき
たいと思います。