法改正
2017-07-14
120年ぶりの民法大改正!不動産賃貸契約はどう変わる!?
5月26日、120年ぶりに債権関係規定(債権法)
に関する改正民法が成立し、6月2日に公布されました。
施行日は、公布の日から起算して三年を超えない
範囲内において政令で定める日になります。
この改正のなかで、マンション投資に深く関係のある
項目があるのをご存知でしょうか。
とは言え、改正は約200項目にも及びますので、
どの項目がマンション投資に関係するのか分かりづらい
と思います。
そこで今回は、マンション投資に関係のある改正を
分かりやすく解説します。
改正の主な柱として挙げられるのは、
「法定利率の引き下げ」「約款の規定」「時効期間の統一」
「個人保証の制限」「敷金や修繕関係の権利義務の明文化」で、
マンション投資に関係してくるのが、「個人保証の制限」と
「敷金や修繕関係の権利義務の明文化」です。
「個人保証の制限」は、保証人となろうとする者の保護
を図ることを目的に改正が行われました。
現行法では、事業融資などで個人が保証人になる場合、
特に制限がありませんでしたが、改正後は自発的な意思の
確認のため、保証人になろうとする者が、公証役場に出向き、
保証人が負う責任について理解したことを、公正証書で示す
必要があります。
そして、保証人が個人である場合は、極度額を書面等で
定めなければ無効となります。
「この改正がマンション投資とどう関係あるの?」
と思われるかもしれませんが、改正によって、賃貸借契約等の
個人の連帯保証人も「個人根保証契約」にかかる規定が
適用され、賃貸借契約時に立てる連帯保証も、極度額を
定めなければ無効となります。
現行法では、署名・捺印だけで連帯保証人になれますが、
改正後はその極度額を定め、契約書に限度額を記載しな
ければなりません。
限度額を記載するということは、「家賃12ヶ月分」や
「150万円」のように記載することになりますので、
具体的に金額を示すことで連帯保証人になるのを躊躇う人
が増え、昨今利用者が多くなってきている、家賃保証会社
の利用が今後さらに増えると考えられます。
「敷金や修繕関係の権利義務の明文化」は、
3つの項目に分けられますので、順に説明していきます。
(敷金制度の明文化)
現行法では明確な規定がなく、トラブルの多かった敷金ですが、
その定義が設けられ、同時に敷金の返還義務が定められました。
【新民法】
1.賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務
その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の
給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付
する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合
において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金
の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の
給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
二 賃借人が適法に 賃借権を譲り渡したとき。
2.賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的
とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てるこ
とができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金を
その債務の弁済に充てることを請求することができない
要するに、敷金はあくまでも「家賃の担保」ということです。
そして、敷金の返還義務もしっかりと明記されています。
敷金は返還され、通常使用による経年劣化において、
修繕費用の負担が賃借人にはないことを示しています。
(原状回復義務の明確化)
賃借人が通常の使用による損耗や経年劣化は、現状回復義務
の範囲外であることが明確化されます
但し、これは任意規定ですので、契約によって
原状回復義務の範囲を広げることができます。
(修繕権の明文化)
現行法では、賃貸人の「修繕義務」が規定されていましたが、
今回の改正で、賃借人の故意や過失による損傷は、賃借人が修繕
義務を負い、また、修繕が必要にも関わらず賃貸人が相当の期間内
に修繕を行わない場合は、賃借人自ら修繕できる要件が明文化されます。
これにより、賃借人が負担した修繕費用を賃貸人に請求する
ことができますが、賃借人が自分の都合の良いよう、勝手に
修繕を行い、賃貸人との間でトラブルが発生する、何てことも
今後は起きるかもしれません。
※「原状回復義務の明確化」と「修繕権の明文化」は、
法務省のホームページで確認できますので、ご参照ください。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00175.html
賃貸借契約においては、明確な定義がないために様々な
トラブルが起きていましたが、敷金にしても修繕義務にしても、
明文化されることで無用なトラブルの減少が期待される一方、
改正することによって新たなトラブルも予想されますので、
敷金や修繕義務などマンション投資に関係のある改正は、
頭の片隅に置いておくと良いかもしれません。