不動産の基礎知識
2012-03-09
東日本大震災から1年、不動産投資におけるリスクとの向き合い方を考える
「首都直下型などマグニチュード(M)7級の地震が南関東で4年以内に発生
する確率は70%(後に訂正され50%)に高まった可能性があるとの試算を、
東京大学地震研究所がまとめたことがわかり、南関東のM7級の確率を30年
以内に70%としている政府の評価を大きく上回った。」
というニュースが1月末に報道されました。
東日本大震災の記憶がまだ新しい内での発表でしたので、特に首都圏に住んで
いる多くの方にとって、このニュースは衝撃的だったのではないでしょうか。
そして、東日本大震災という未曽有の大地震から早くも1年が経過しようとし
ています。
東日本大震災で起きた津波による家屋の倒壊や福島第1原子力発電所の事故の
ために、家や商売を捨て避難を余儀なくされた多数の住民の方たちは、あれか
ら1年が経つ今も帰宅できず、被害の補償を求めて戦うことを強いられながら
依然、不安を抱えたままの生活が続いているようです。
復旧に向けて少しずつ進んではいるのでしょうが、まだまだ大震災による爪痕
が深く残ったままの地域が多数あります。
首都圏では建物が倒壊するような被害はほとんどありませんでしたが、震災当
時は液状化による被害がニュースを騒がしていましたし、最近では前述した東
大の地震研究所の発表などがあったため、不動産投資を検討されているお客様
で地震に対するリスクを感じる方は、震災前と比べると非常に増えました。
日本は地震大国なので気にされる方はもともと多かったのですが、よりシビア
に考えられる方が増えてきてように感じます。
確かに地震はリスクですが、そもそも投資にリスクは付き物です。
リスクの意味を辞書で調べると、経済学においては一般的に「ある事象の変動
に関する不確実性」を指すとあります。
まさに地震は不確実性の高いものです。ただ、不確実だからと言って目を背け
てしまうと、何もできなくなってしまいます。現在のように何もしないこと自
体がリスクとなってしまうような時代では、指をくわえたまま何もせずに老後
を迎えるわけにはいきません。
では、リスクとどのように向き合っていくのが良いでしょうか。
答えは意外と簡単で、リスクはその危険性の度合いをしっかりと見定めた(客
観的なデータから判断した)上で、「許容できる/できない」を判断すれば良
いのです。
地震のリスクであれば、過去の大地震による被害状況からある程度推測するこ
とができます。もちろん推測の範囲を越えることはありませんが、具体的な事
例で検討することによりリスクの範囲が見えてきます。
【東日本大震災の被害状況】
平成24年3月7日現在(警視庁調べ)
全壊:128,411件
半壊:245,540件
全焼・半焼:281件
数字だけを見てしまうと、全壊・半壊合わせて30万件を超える数に、今回の
大地震の揺れの強さに驚愕してしまいますが、実は地震の揺れ自体による建物
の構造的な被害は、マグニチュード9という過去最大級の地震の大きさにも関
わらず少なく、全壊・半壊の被害の大部分は津波によるものです。
もし津波の被害を受けないエリアでの地震であったならば、被害はかなり抑え
られたであろうと言われています。
では、マンションの被害はどうだったのでしょうか。
分譲マンションの管理会社が会員になっている社団法人高層住宅管理業協会が
9月21日に発表した「東日本大震災の被災状況調査報告」によると、
(集計対象:東北36,629組合/46,365棟/2,327,400戸)
大破は「ゼロ」件で、
中破:44件
小破:1,184件
軽微:7,477件
被害なし:37,660件(全て棟数)
という結果でした。
大破:致命的な被害(建て替えが必要)
中破:大規模な補強・補修を必要とする
小破:タイル剥離・ひび割れ補修
軽微:外観上は殆ど損傷なし・又は極めて軽微
軽微7,477件+被害なし37,660件=【45,137件】÷46,365件=0.975
つまり、97%以上は軽微な損傷に止まったということです。
おそらく大規模な補強・補修を必要とする「中破」に該当する44件も、その
被害の原因は津波によるものだったと思われます。
そして、全壊・半壊が30万件以上あったにも関わらず、マンションの被害状
況が大破/ゼロ、中破/44件だったことを考えると、その被害のほとんどが
木造家屋であったことがわかります。
このように事例を具体的に調べていくと、リスクの実態(考慮すべき範囲)が
見えてきます。何も考えずに「地震が怖い⇒不動産投資はNG」という図式に
持っていってしまうとそこで終わってしまいますが、実際はどうなのか、許容
できるリスクではないのか、と突き詰めて考えていくと自ずと答えが見えてく
るものです。
もちろん地震のリスクをゼロにすることは不可能です。
しかし、「建物と立地」この2点をしっかりと押さえて選択すれば、ゼロに近
づけていくことは可能だと思います。
建物・・・新耐震基準を満たした鉄筋コンクリート造のマンション
立地・・・火災、地盤沈下、津波等が発生するおそれの少ないエリア
これらを満たす物件であれば、不動産投資においての地震リスクはかなり軽減
できるのではないでしょうか。そして、今回の大震災でその脅威を目の当たり
にした津波ですが、「M7級、4年以内、70%(50%)」の予測をした東大
の地震研究所が以下のような発表をしています。
「首都圏地震の場合の東京湾への津波の高さは1メートルから1.5メートル」
この予測は関東大震災のデータも参考にして推定しているそうで、波高1メー
トルでは陸地への影響はほとんどなく、1.5メートルは低地での床下浸水が
懸念されるレベル、4メートルを超えると家屋が全半倒壊するケースが多いそ
うです。
いかがでしょうか。
これまで地震のリスクを考えて不動産投資のスタートを切れていない方も、こ
のように具体的に調べて現実を見ていくと、手探り状態から少しは前に進めそ
うではないでしょうか。
もちろん最終的に判断を下すのは皆様ご自身ですので、無理に不動産投資を勧
めているわけではありませんし、本当に地震が怖くてしょうがないと言う方は、
不動産投資に向いていないと思いますので、やらない方が良いでしょう。
ただ、地震だけでなくその他のリスクに関してもそうですが、不動産投資をや
るかやらないか迷っている方は表面上の情報だけで判断をしてしまうのではな
く、一つ一つのリスクを突き詰めて考え、し