不動産の基礎知識
2009-10-15
『マンション投資を考える① ~管理費における一例~』
近年、運用の世界において、不動産と金融・証券が非常に接近してきたように
思います。
その結果、不動産投資でも当たり前のように“利回り”が語られています。
個別性が強く、一般の方にとって、なかなか妥当な価格が把握しにくい不動産
において、分かりやすい目安があるのはいいことです。
でも、ちょっと気になる部分もあります。
例えば、インターネットの解説サイトやハウトゥー本などで、マンション投資
と利回りについて、こんな説明を多く見かけます。
■表面利回りではなく実質利回りで!■
不動産会社の広告などで表示されている利回りは、いわゆる「表面利回り」と
いって、経費などを織り込んでいない単純計算した数値にすぎません。
実際に投資をする皆さんに必要なのは「実質利回り」です!
マンション投資はこの実質利回りでどのようになるのかをしっかりと把握した
上で行う必要があります!
いかがでしょう?なんだか正義の味方みたいですね!
(そうなると、表面利回りをアピールした広告をしている不動産会社は悪徳の
イメージでしょうか!?)
ちなみに当社のセミナーでは、ファイナンシャルプランナーの北野琴奈先生な
どは特にこのあたりの詳細な説明をしていますので、どうぞご安心ください。
それでなくとも、セミナーに参加するような研究熱心なお客様は、「表面利回
りを純粋な手取り収益と誤解して」マンションを購入してしまう、などという
ことは考えられません。
それよりも、先の説明ではちょっと浅すぎて、逆の方向で心配です。
説明をそのまま当てはめると、例えば
物件A:表面利回り8.0%、実質利回り7.0%
物件B:表面利回り8.0%、実質利回り6.0%
といった二つの物件があった場合、当然物件Aを買え、となるのでしょう。
マンション投資において、あまりにペーパー上の数字重視になり過ぎて、「実
質利回りで判断しなさい!」となると、上記のような実質利回りを下げる経費
は、すべて邪魔ものとなってしまいそうです。
その経費の代表的なものが“管理費”です。
管理費とは、マンション共用部分の通常の維持管理に必要な費用で、管理人さ
んのお給料や共用部分を掃除してくれるおばさんのパート代、廊下の切れた電
球の交換費用やエレベーターの保守点検費用などです。
管理会社の中でも確かに良い管理会社とそうではない会社があるとは思うので
すが、マンション管理の業務内容自体は、国土交通省が指定した『マンション
標準管理規約』(管理組合の憲法と呼ばれています)に基づいており、どこの
管理会社もほぼ一律なのです。
では管理費の違いは何が原因かというと、単純な話で、共用部分の設備の違い
というのが最大の理由です。
具体的には、
防犯面:「オートロックの有無」「警備会社への加入状況」「管理人の管理形態」
「防犯カメラの有無」など
生活面:「エレベーターの有無、設置数」「宅配ボックスの有無」「敷地内ゴミ
置き場の有無」「駐輪場、バイク置場の有無」などです。
また、これまた単純な話なのですが、総じて設備の充実している物件は築年数
が浅く、そうではない物件は古いということが言えます。
整理しますと、「実質利回りが高いから買い!」ではなく、
「実質利回りは高いけど、それは築年数が古くて設備が不十分だからか。だと
すると長期的な賃貸経営に不安は無いかな。」
あるいは
「実質利回りが少し下がるけど、それは築年数が新しくて設備も整っているか
らか。将来の空室や家賃下落のリスクなどを総合的に考えると返って安心で有
利かもしれないな。」
といった思考になることが必要ではないかと思います。
そして、もし
「ちょっと古くて設備も軽微なので管理費が安いな。だから実質利回りは高い
な。しかも抜群の立地なので、入居者に人気があって賃貸に自信が持てるな。」
とか
「築浅で設備も整っているのに管理費が安くて実質利回りが高いな。なるほど、
ファミリータイプの広めの部屋が多いので、コンパクトなワンルームの部屋に
かかる負担が少ないんだな。」
といった“いいとこ取り”な物件なら、さらに魅力的です。
もちろん、マンション購入の際の選定ポイントは管理費だけではありません。
それどころか、マイナーな部分だと思います。
それでも、その管理費一つを取り上げても、こういった考察ができるのです。
今回の話はほんの一部で、まだまだお伝えしたいことは山ほどあります。
“マンション投資”、いろいろ考えれば考えるほど、深いものがあります。
引き算一つで、「実質利回り出ました、こっちが有利です!」とはいかないの
が、マンション投資なのではないでしょうか。