不動産の基礎知識
2017-10-13
不動産所得とキャッシュフローの違いを確認しましょう!
10月に入り、今年も残すところ2ヵ月余りとなりました。
そして、アノ時期も着々と近づいています。
そう、確定申告です。
既に経験済の方は、「ああ、またこの時期が来る・・・」と、
憂鬱に思われているかもしれません。
今年はじめて確定申告をされる方は、申告に向けて
早めの準備をしているかもしれません。
不動産所得は年末で決算を行い、平成29年分は来年の2月16日
から3月15日までの間に確定申告を行うことになります。
そこで今回は、不動産投資を行ううえで押さえておきたい、
「不動産所得とキャッシュフローの違い」について、解説します。
確定申告の際、お金の収支(キャッシュフロー)に対して
税金がかかると思っている方がいらっしゃいますが、
これは間違いです。
税金は経費を差し引いた、「不動産所得」に対してかかります。
不動産所得とキャッシュフローを混同することは、
不動産投資を行ううえで致命傷になりかねませんので、
以下に数字を示しながら、解説をしていきます。
区分マンションを1戸購入したケースを想定し、
お金の流れを年間ベースで見ていきましょう。
- キャッシュフロー(CF)の計算
【収 入】 賃料 120万円
【支 出】 固定資産税 5万円
管理費 7万円
修繕積立金 5万円
支払利息 30万円
元金返済 60万円
【C F】 収入-支出 13万円
次に「不動産所得」の計算をしてみます。
- 不動産所得の計算
【収 入】 賃料 120万円
【経 費】 固定資産税 5万円
管理費 7万円
修繕積立金 5万円
支払利息 30万円
減価償却費 100万円
【不動産所得】収入-経費 ▲27万円
【所 得 税】 0万円
※実際は損益通算により所得税の還付が受けられます。
上記の2表は似ている様ですが、キャッシュフローが13万円に
対して、「不動産所得」は▲27万円で、差額が40万円あります。
この差額は、計算方法よって生じる差です。
キャッシュフローの計算では、「支出」に「元金返済」を含むことが
出来ますが、不動産所得の計算上では「経費」に「元金返済」を計上
することが出来ません。
一方の不動産所得では、「経費」として「減価償却費」
を計上する事が出来ます。
この減価償却費は、現金支出を伴わないものです。
このケースの場合、減価償却費100万円に対して、元金返済額が60万円、
その差額40万円がキャッシュフローと不動産所得の差額となっています。
次に、購入後10年を経過した時点でのキャッシュフローと
不動産所得の計算をしてみます。
- キャッシュフロー(CF)の計算
【収 入】 賃料 120万円
【支 出】 固定資産税 5万円
管理費 7万円
修繕積立金 5万円
支払利息 15万円
元金返済 75万円
【C F】 収入-支出 13万円
次に「不動産所得」の計算をしてみます。
- 不動産所得の計算
【収 入】 賃料 120万円
【経 費】 固定資産税 5万円
管理費 7万円
修繕積立金 5万円
支払利息 15万円
減価償却費 20万円
【不動産所得】 収入-経費 68万円
【所 得 税】 13.6万円(68万円×20%)
*便宜上、賃料および固定資産税は購入時と同額とし、
所得税の税率は20%とします。
この結果、キャッシュフローは変わらず13万円ですが、
不動産所得が68万円で、納税所得税が13.6万円。
納税所得税がキャッシュフローを上回っていますので、
最終的には“赤字”ということになります。
この現象は「デットクロス」と言われ、不動産投資を
行ううえで、必ず押さえておかなければならないポイントです。
そしてこの現象を生み出す要因として、減価償却の耐用年数
とローンの支払い利息が挙げられます。
現在、減価償却費の計算は定額法で行われますが、建物本体に
比べて耐用年数が短い“設備”の減価償却が終了すると、
総体の減価償却費は大きく減少します。
例の場合、当初減価償却費は100万円でしたが、
10年後には20万円に減少しています。
また、元利均等払いでローンを組んだ場合、元金返済額は徐々に
増加しますが、不動産所得に経費計上ができる支払い利息が
減少することによります。
これはローンを組んで物件を購入した場合、
いつか必ず起きる現象です。
区分マンションの場合は、この程度の数字で済みますが、
1棟ものになるとこの金額はさらに大きくなり、
黒字倒産になりかねません。
不動産所得とキャッシュフローの違いをしっかりと意識して、
不動産所得は黒字でも「お金が足りない!」ということにならないよう、
利益はむやみに使わず、内部留保またはローンの繰り上げ返済
にあてることが肝要になります。
上記をご参考に、皆さんの不動産投資が成功するよう、
今後も様々な情報提供をさせて頂きたいと思います。