不動産の基礎知識

2014-05-23

【不動産の基礎知識】~修繕積立金~

今回は、不動産の基礎知識の一つとして修繕積立金についてお話したいと思います。

 

修繕積立金とは、マンションを長期にわたって快適で安全な住まいとしての

維持・大切な資産としての価値を保全するために行われる“修繕”に備えて

区分所有者が積立てて行くお金のことです。

 

では、区分所有者が支払う事となるこの修繕積立金の毎月の支払額は

どのようにして算出されているのでしょうか。

 

近年販売されている物件については、分譲会社が販売時に、将来予想される

修繕工事費用を盛り込んだ長期修繕計画を策定しています。

この長期修繕計画は、いつどのタイミングでどのような工事を行うのか、

それに対していくらお金が必要になるのかを算出して決められています。

 

例えば、鉄製で出来ている玄関枠やパイプシャフトの扉などは、定期的に塗装

工事を行わないと錆が出たり色が剥げたりして、“みっともないマンション”

になりかねませんし、美観の問題だけではなく、階段やバルコニーの手すり、

屋上の柵等が腐食すると大きな事故につながりかねません。

 

そして、日常の修繕保守工事の他に10年~15年に1回、足場を設置して外壁

の補修や屋上等の防水工事、電気設備や給排水設備を行う大規模修繕工事など

もあります。

 

このような修繕工事が盛り込まれた長期修繕計画に基づいて、計画期間中の

修繕費用総額をまかなえるように逆算し、区分所有者の持分(専有面積の割合)

に応じて(一律の場合もある)毎月の積立金額が算定されます。

※経過年数に応じて段階的に金額を上げいく計画が比較的多く、新築販売時の

金額は低めに設定されているものがほとんどです。

 

皆様は物件選定をされる際に、毎月の出費となるこの修繕積立金が資産価値を

維持するために必要不可欠な大事な出費だと捉えていますか?

それとも、利回りを下げてしまう悪玉として捉えていますか?

 

たしかに、実質利回りを計算するうえで管理費と修繕積立金は毎月の出費となり

ますので、当然のことながら修繕積立金が安い方が実質利回りは上がります。

 

しかし、新築時から築年数が経過しているにも関わらず、あまりにも金額が

安いままの物件には注意が必要です。

 

長期修繕計画を基に算出した結果、安いままの金額で積み立てて行っても充分

に修繕が可能という事であれば問題はありませんが、なかには他の区分所有者

が高利回りを維持する為に修繕積立金を値上げする事を拒み、一向に値上げに

踏み切らないマンションなどもあります。

 

それでは、大規模修繕の際に修繕積立金が充分に積みあがっていなかった場合

どのような事態が発生するのでしょうか。下記のような事態が予想されます。

 

①各区分所有者から一時金として高額な金額を徴収する。

②区分所有者で構成されている管理組合が金融機関から借り入れを起こして

大規模修繕を実施。以後の修繕積立金を値上げし返済をしていく。

③大規模修繕が積立金の範囲内のみでの工事となり、十分な修繕工事が行われない。

 

①と②に関しては、購入前に組んだ長期シミュレーションを下方修正し

直さなければなりません。

 

③の場合は、優先順位の低い工事が後回しになる事で外壁の汚れが放置されたり、

給排水管のメンテナンスが行われないなどのケースも考えられ、マンションの見

た目の印象や配管の詰りや漏水などにつながってきます。

 

外観が汚い、設備が劣化している、そのようなマンションに

果たして入居してもらえるのでしょうか?

仮に入居者がいても今と同じ家賃が取れるのでしょうか?

 

上記のような事態に陥った場合、マンション経営最大のリスクである空室や賃料の

下落リスクが極端に高くなる可能性もあります。

 

購入を検討されるのであれば、物件を購入する前に必ず修繕積立金がどれ位積み

立てられているのか、修繕工事の履歴や予定を【重要事項に係る調査報告書】で

確認をしてください。

 

平成23年4月には国土交通省が『修繕積立金のガイドライン』を策定している

のですが、目的として下記のような記載があります。

○マンションの良好な居住環境を確保し、資産価値の維持・向上を図るためには、

計画的な修繕工事の実施が不可欠であり、そのためには、長期修繕計画に基づき、

適正な修繕積立金の額の設定を行うことが必要です。

 

修繕積立金を毎月の収支や利回り計算の一つとしてだけ考えるのではなく、良好な

住環境を維持し、今後も入居者様が「長く住みたいな」「ここに住みたい」と思って

頂けるため、そして何よりも末長く家賃収入を形勢していくうえで大変重要な要素

だという認識を持っていただきたいと思います