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2016-06-17

法整備がカギ!?民泊解禁への道を着々とすすむ日本

今年度中の民泊新法と旅館業法改正に向け厚生労働省と観光庁は、

民泊の新制度の骨子を固め、6月中に最終報告をまとめることが

決まりました。

 

新制度で民泊は、「住宅を活用した宿泊の提供」と定義され、

『一定の要件』を満たしていれば、住居専用地域での実施も可能

になるとのことです。

 

一定の要件として、年間提供日数の上限や宿泊者1人当たりの

面積基準などが定められる見込みで、上限を超えて営業する場合は、

旅館業法の規定に基づく簡易宿泊営業許可などの取得が必要になります。

 

また、「当初から所有者が居住していないものを『住宅』とみなしてもいいのか?」

要するに、投資用マンションも新制度の対象になるのか、という意見も

出たようですが、営業日数や管理者を置くこと、管理規約等に違反

しないことなどを前提に、投資用マンションも新制度の対象として

検討がすすめられています。

 

最終報告に向け制度案の大詰めに入っているようですが、

提供日数に上限を設けることに対しては反対意見が

あがっています。

 

現段階で営業日数の上限は180日とされていますが、

民泊業に参入しようと検討している賃貸業からは

「180日では事業としてペイしない」と上限撤廃の要望が

出されています。

 

みなさまはこの民泊解禁をどのように捉えられていますか?

賛成ですか?反対ですか?

 

今回のコラムでは、この民泊を投資対象としてではなく、

一般市民からの視点で考えてみたいと思います。

 

まず、世論はどのようにみているのでしょうか。

 

マーケティングリサーチ会社の(株)ジャストシステムが、

東京都に在住の20歳から69歳の男女1,000名に「民泊に関する意識調査」

を実施し、その結果を公表していますので一部ご紹介いたします。

※「あてはまる」は「あてはまる」「ややあてはまる」の合計

「あてはまらない」は「あてはまらない」「あまりあてはまらない」の合計

 

  • 「民泊」によってマンションの入り口などに外国人が集まることが

多くなる可能性があり不安を感じる

 

 あてはまる:68.9% どちらともいえない:21.0% あてはまらない:10.1%

 

  • 「民泊」が犯罪目的に使われる可能性について不安を感じる

 

 あてはまる:66.7% どちらともいえない:23.6% あてはまらない:9.7%

 

  • 「民泊」サービスが解禁になるという報道がされていますが、

そのことについてあてはまるものをお選びください。

 

 トラブルを未然に防ぐための『法整備』をするならば賛成してもいい:46.2%

 犯罪などの温床になる可能性があるので、どちらかといえば反対:26.1%

 民泊サービスの自由化には絶対反対:11.3%

 民泊サービスの自由化を歓迎する: 7.7%

 よくわからない:8.8%

 

民泊解禁に全面的に賛成というのは少数で、

不安を感じている人が多いことが伺えます。

 

民泊が話題になってからというもの、問題点やトラブルが

度々報道されていますので、不安を感じるのは無理もありません。

 

今年3月には、民泊解禁に反対している宿泊施設業界の関係者が、

「緊急フォーラム」を開催し、観光大国フランスの「民泊の真実」

で衝撃的な惨状が明らかになりました。

 

フランスでは2014年3月、「住居を持つ権利と新しい都市計画に関する法律」

(通称ALUR法)が制定され、家やアパートなどを許可なしに短期賃貸が

可能になりました。上限日数などの定めはありません。

 

するとアパートなどの所有者は、収入が多く見込める民泊への貸し出しを

優先、賃貸物件が不足したことでパリ市内の家賃相場は急上昇し、

賃貸契約の25%が更新されず、住宅不足が深刻化しました。

 

事業者団体「GNI」のディディエ・シュネ会長は同フォーラムで

「住民が減った結果、学級閉鎖といった事態も起きている」という

衝撃的な事実を明かし、「もうフランスはAirbnbにやられてしまった。

日本はまだ間に合う、フランスと同じ轍を踏まないでほしい」

と警鐘をならしました。

 

日本では若年層の居住費の負担比率が増えたことが、

晩婚化や出産数にも影響を及ぼしているとも言われています。

 

また、定住者が少なくなれば住民税の税収が下がり、

行政サービスが陳腐化してしまうかもしれません。

 

現段階では、投資用マンションも新制度の対象となる風向きです。

これが実現した場合を想像してみてください。

 

言葉が通じない、生活習慣が違う不特定多数の外国人が、

突然隣の部屋を出入りするようになる。

 

不快とまでは言わなくとも、不安になりますよね。

 

前述した意識調査では、このような結果も出ています。

 

  • 自分が住むマンションやアパートに見知らぬ人が出入り

するのは勘弁してほしい

 

 あてはまる:72.3% どちらともいえない:21.0% あてはまらない:6.7%

 

  • 自分が住むマンションやアパートの入り口や周辺に

見知らぬ人が集まるのは勘弁してほしい

 

 あてはまる:73.6% どちらともいえない:21.0% あてはまらない:5.5%

 

約7割は自分が住んでいるマンションで、見知らぬ人が

出入りするのに嫌悪感を抱くという結果になっています。

 

問題点としてよく「騒音」問題が取り上げられていますが、

その騒音にしても、同一人物ではなく都度違う旅行者によって

もたらされると想像すると、「民泊」で貸し出されている隣の

部屋に住みたいと思われる方は少ないのではないでしょうか。

 

民泊として貸し出される前から住んでいる人が、

それを理由に引っ越す可能性も十分に考えられます。

※既にそのような事例が報告されています。

 

なぜ、元々の住人が引っ越さなければならないのでしょうか。

 

部屋を民泊として貸し出す側にもリスクがないわけではありませんが、

通常の賃借人の立場に立って考えることが、何よりも重要なのでは

ないでしょうか。

 

民泊解禁は、治安の悪化や騒音被害、地域の荒廃などにつながる

可能性を十分に孕んでいます。

 

解禁するのであれば法整備をしっかりと行い、

慎重に新制度の検討をすすめてほしいと思います。