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2015-07-10

高まる新耐震基準の重要性

先月24日、2014年夏に値上がりしたばかりの地震保険料が、来年秋、

さらに19%値上げされることが決まりました。

 

先の東日本大震災で、地震や津波によって多くの建物が倒壊したことは

記憶に新しいですが、今回の値上がりは、南海トラフ巨大地震など大地震の

リスクが上昇したことがその理由とされています。

 

日本に住む誰もが認識していることですが、日本は地震大国です。

当然、不動産投資において地震のリスクは切っても切り離せません。

 

地震や津波によって建物が破損・倒壊するなど、人が住めない状態に

なった場合、賃料収入を得ることが出来なくなるうえ、建物の修繕に

余分な資金が必要となってきます。

 

しかし、日本国内に建てられている全ての建物が破損・倒壊のリスクを

背負っているのかと言えば、破損することはあったとしても、完全に倒壊

する可能性がゼロに近い建物も多く存在します。

 

倒壊の危険性が高い建物と、そうではない建物の違いは、地震大国

日本における建築基準法等の耐震基準の変遷にみることができます。

 

1968年に発生した十勝沖地震では、当時耐震基準を満たしていた

鉄筋コンクリート造の建物のほとんどが倒壊。

 

この被災が発端となり、1971年に法改正、1981年には新耐震基準の制定、

さらに2000年頃の見直しにより、新耐震基準前の建物と新耐震基準後の

建物との間で耐震性能の差が生じました。

 

そして、この新耐震基準と旧耐震基準の建物の被害の差が最も

顕著に表れたのが、1995年の阪神・淡路大震災です。

 

この震災で倒壊した建物のほとんどが1981年以前(新耐震基準前)

に建築された旧耐震基準の建物で、震度6強~7クラスの地震でも

倒壊しないことを目標としていた新耐震基準の建物は、ピロティ式建物

を除いて、倒壊した建物は1棟もありませんでした。

 

そして、このような震災の教訓を生かして、平成25年11月には

耐震改修促進法により、旧耐震基準で建設された全てのマンション

に、耐震診断の義務が課されました。

 

この法律により、旧耐震以前の物件は、耐震診断を行い、耐震性能が

不足している場合には、耐震工事を行う必要があります。

 

では、この耐震工事を実施する場合、どのくらいの費用が

必要となってくるのでしょうか?

 

あくまでも目安となりますが、建築物の構造、規模、改修の程度によって、

一般的な鉄筋コンクリート造建築物の場合、延べ面積に対して

15,000円/㎡~50,000円/㎡程度の費用が必要となってきます。

 

このような耐震診断や改修工事には、修繕積立金が充当されるのですが、

経過年数の経っているマンションの場合、長期修繕計画の中に耐震化が

含まれていないことがほとんどです。

 

そのため、まとまった金額を一時金で捻出しなければならない、

管理組合で借入を起こさなければ工事自体ができない、という

状況に陥りかねません。

 

また、耐震補強による住環境の変化、

というマイナス要素も考えなければなりません。

 

例えば、補強工事によってベランダに大きな柱がとり付けられる

ことによる眺望や採光の変化、室内の耐震補強によって居住面積

が減少するなどといった生活環境に影響を及ぼし、さらには、

資産価値の低下という悪影響を及ぼしてしまうことも考えられます。

 

不動産投資は長期の運用商品になりますので、

リスクマネジメントが重要になります。

 

経過年数の経っている物件は、地震のリスクを内包

しているものが非常に多く存在します。

 

利回りばかりを追い求めて安価な新耐震以前の物件を購入すれば、

その利回りが仮想利回りとなってしまう可能性を十分に孕んで

いますので、物件選定の際には注意が必要です。