不動産の基礎知識

2011-06-10

『ルール違反はペイしない!実需を装うローン調達』

今週、ニッポン放送株を巡るインサイダー取引事件で最高裁が上告を棄却し、

村上ファンド元代表の有罪が確定しました。

エリート官僚からファンドビジネスへと異色の転身を遂げ、時代の寵児として

一世を風靡した村上氏ですが、ファンドのパフォーマンスという本来的な評価

基準以外の「ルール違反」で、あっけなく失速してしまいました。

 

智恵や情報を競い合う投資の世界ですが、それだけにルールを守ることは大切

です。これは何も正義漢ぶって言っているのではなく、まさにリスクと直結す

ると思うからです。

 

村上ファンドの判決も懲役(執行猶予付き)、罰金に加え追徴金11億490

0万円という厳しいものでした。

更に社会的制裁なども考えると「ルール違反」は間尺に合わないリスクテイク

だったと思います。

 

さて、マンション投資においても時々「それってルール違反では?」といった

話を耳にします。その一つに、「実需を装ってのローン調達」があります。

 

他人に賃貸する目的の投資用の部屋よりも、実際に自分の住む部屋(実需)を

購入する場合の方が、金融機関のローン審査も緩やかであり、また金利などの

条件面でも有利になっているのが一般的です。

 

問題なのは、投資用なのに実需と偽って金融機関にローンを申請し、本来であ

れば投資用としては審査を通過しない方が通過したり、また条件面でも有利な

金利を獲得したりする場合です。

 

確かに、お仕事やご家庭の事情で転居が必要になり、自分のお住まいをやむな

く賃貸に出されることはよくあることですが、最初から住む予定がないのに金

融機関に虚偽の申請をすることはルール違反です。

 

どうして私たちがこのような不正を知るかといいますと、多くの場合、お客様

ご本人が教えてくれるからなのです。中には、あたかも「こんな良い方法があ

ったんだよ」と、得意気にお話してくれる方もいます。

そしてこのように、お客様にルール違反の意識が乏しいのは、どうやら不動産

業者の方から誘っているかららしいのです。

 

これは業者として完全にミスリードです。

プロから提案されればお客様も、厳密にはルール違反かもしれないが許容範囲

なのだろう、とリスクを低く見積もってしまいます。

 

しかし、実際にはリスクは小さくありません。

利用目的を虚偽申請した場合、厳密には金融機関は融資金の一括弁済を請求す

ることが可能です。

そんなことになったら、他の資金調達に慌てて奔走するか、物件を強引に売却

しなければなりません。いずれにしてもろくな結果にはならないと思います。

 

実際に金融機関がどのくらい強硬な対応をしているかは把握が難しいですが、

仮に今は目をつぶってくれていても長いローン期間中、ずっと不安な気持ちで

いるのもつらいことでしょう。

 

また、マンション経営では複数戸の所有を目指すことも多いと思いますが、仮

にこういったローン自体が現在問題になっていないとしても、償還表の提出な

どでイレギュラーなローン利用状況は把握可能ですので、次の資金調達が困難

になってしまいます。

 

さらに、目先の利益のために不正な勧誘をした業者の方も、そのような営業姿

勢が発覚すれば金融機関との提携解消といったリスクがありますし、万が一、

販売した不動産業者が破綻するようなことになれば、これまたお客様の不安は

増大することでしょう。

 

長いマンション経営です。

その長きに渡ってお客様をフォローさせていただくためにもルールを守ること

は大事だと思っています。