不動産の基礎知識
2011-04-22
『うまい話には裏がある!ある家賃保証の落とし穴』
今回は、先日聞いた家賃保証の落とし穴のお話をさせていただきます。
家賃保証とは、サブリース契約、一括借り上げ契約などと呼ばれることもあり
ますが、オーナー様と不動産会社(ほとんどは販売会社、もしくはその系列の
賃貸管理会社が多い)の間で不動産会社が転貸するという賃貸借契約を結び、
空室になった場合は不動産会社が当該物件を借り上げて一定額の家賃を支払う、
というサービスです。(東京では査定家賃の90%の保証システムを採用して
いる会社が多いようです)
当社も例外ではありませんが、東京では投資物件を販売するほとんどの会社が
謳っているサービスです。
先日ご相談に来られたお客様(以下Aさん)から聞いたのは、そんな家賃保証
に関するエピソードでした。
Aさんのマンション経営は、5年前にAさんの出身地でもある福岡市の中心部
の新築ワンルームマンションを購入したことから始まりました。
当時のAさんは、マンション経営に関しての知識が全くない初心者オーナーだ
ったのですが、そんなAさんが購入に踏み切った最大の理由は、「10年間の
家賃保証(月額7万円)」という販売会社による保証システムがあったからで
した。
Aさんは「10年間家賃を保証してくれるのであれば、月々の返済は全て賃料
で支払っていけるから、負担なく返済していけるな」と安心し、システムの内
容などに関して深く考えず、営業マンに言われるがまま新築マンションを購入
してしまいました。
そんなAさんが福岡のマンションを購入して3年が経った頃、信じられない事
件が起こりました。
なんと、その10年間保証すると約束した販売会社が倒産してしまったのです。
その販売会社と保証契約を結んでいたAさんの口座には、次の月から家賃が入
ってくることはありませんでした。
家賃が入らないからといって返済は待ってくれません。
Aさんは、すぐに販売会社からの転貸先の賃借人と賃貸借契約を結び直そうと
しましたが、そこでさらに驚愕の事実が判明しました。
毎月7万円の家賃が保証されていましたが、実際の賃借人(転貸先)へ貸して
いた家賃は5万5千円だったのです。つまり、販売会社からすれば1万5千も
逆ザヤの状態で保証をしていたということなのです。
裏から見ると1万5千円の保証を10年間続けても利益が出るくらい、販売価
格を高めに設定していたのでした。
実際の賃借人との賃貸借契約を引き継ぐしかないAさんは、収入が1万5千円
のマイナスとなった結果、月々のローン返済にかなりの負担を感じるようにな
り、今後どうすればよいのか弊社に相談に来たというわけです。
残念ながら不動産会社の中には「家賃保証」という、本来ならオーナー様を安
心させるべきシステムを悪用して販売をしている会社があるようです。
家賃保証を隠れ蓑にして、あたかも高額家賃が取れる物件と見せかけて販売す
るだけでも問題ですが、今回のケースのように保証途中で倒産してしまうよう
な最悪のケースも何件か聞いたことがあります。
この販売会社の場合、倒産に向かった原因は景気停滞による販売利益の減少だ
と言われてはいますが、逆ザヤ家賃保証のような禁断の販売手法を常習的に使
って利益を拡大していったツケが、景気停滞によって一気にマイナスだけが露
呈して破綻に向かっていったのです。
不動産業界では「家賃保証システム」や「設備(エアコンや給湯など)の修理
保証システム」など、様々な保証システムがあります。
これらのシステムそのものはお客様に安心を与えるということでは良いことだ
と思いますし、当社でも導入しているものもございます。
ただ、それが今回のケースのような逆ザヤ家賃保証など、経済合理性の無いも
のはいつか破綻します。
うまい話には裏がある。
当たり前のことですが、高額商品である不動産を購入するわけですから、これ
から始める皆様には冷静に判断していただきたいと思います。