不動産の基礎知識
2011-04-15
『1棟物件からワンルームへ、袋小路からの脱出』
当社は個人投資家向けの物件、中でもワンルームマンションと呼ばれる都市部
の小型物件をメインに取り扱っております。
しかし、個人投資家向け物件の延長としてアパートや1棟物件についてのご相
談もしばしば受けることがあります。
そんな時はもちろんベストを尽くしてお手伝いしていますし、そのまま気に入
ったアパートや1棟物件を発見できることも当然あります。
しかし、多くのお客様がかなり高い確率で「気にった物件を発見できない」と
いう袋小路に迷い込んでしまいます。
今回お話するAさんも、典型的なそんなお客様の一人でした。
Aさんのリクエストは、とにかく利回りと月次の収支を優先というものでした。
しかもそのターゲットにしている数字はかなり高いものでした。
当社としましては違和感を覚えたものの、取りあえずはご希望に沿った物件探
しをしてみたところ、抽出されてくる物件は最寄り駅が私どもでも聞いたこと
のない駅であったり、またその駅から徒歩では遠すぎる距離であったりといっ
た有様でした。
しかも、あろうことか私たちが選定に苦慮している最中に、Aさんからは更な
るターゲット利回りアップの依頼がきたのです。
それでも、なんとか数字上はリクエストに合致する物件を私たちはAさんに紹
介しました。当然、運用上かなりリスキーな物件であること、従って現地調査
は念入りに行った方がよいといったアドバイスを添えながらですが。
そして実際、一緒に現地調査に行ってみたのですが、悪い予感は的中でした。
物件は2階建てのアパートだったのですが、不便な立地が災いして賃貸では相
当苦戦している様子で、特に1階部分の空室期間はかなり長期に渡っていまし
た。
さすがにAさんもこれはまずいと感じられて、当該物件の購入は早々に断念し
ました。
その後も幾つか候補物件を見てみましたが、結果は同様でした。
そこで、Aさんと私たちは改めてどうしてこうなってしまったのかを検証する
ことにしました。Aさんの心の中を旅するような様々な話し合いの結果分かっ
てきたのは、次のようなことでした。
・Aさんは、初めから高すぎる利回りを希望していたわけではなかった。
・どちらかというと将来に向けた落ち着いた資産形成を望んでいた。
・しかし、ある程度部屋数があるアパートや1棟ものはやはり金額が高く、個
人としては一世一代のローンを組む必要がある。金利負担も相当な金額になる。
・シミュレーションを繰り返せば繰り返すほど、さらに高い収支が必要に感じ
られた。
といったものです。
つまりは、自分で設定した一気に複数戸のオーナーになるという目標やそれに
必要な金額の大きさがプレッシャーになって、現実と乖離した希望条件になっ
ていき、またそれを修正できないでいたわけです。
そこでちょっと肩の力を抜いて、私たちの得意分野である小さな区分マンショ
ンの話をさせていただきました。
メリットやデメリット、ローンの流れなど、アパートや1棟ものとの違いを説
明しました。
するとAさんからも、「部屋が1つ」ということ以外は、立地も設備も当初自
分が描いていたイメージ通りだとおっしゃっていただきました。
そして、なんといっても金額が1棟物件などに比べると遥かに小さく、落ち着
いて考えられるとのことでした。
話し合いが終わるころにはアパート、1棟物件のオーナーになる夢は持ち続け
ながらも、先ずは最小単位の不動産投資であるワンルームマンションから大家
さん業を体験してみようということになっていました。
そして実際、その後のAさんの動きは早く、学生時代に通学されていた土地感
のあるエリアの物件を気に入り、ワンルームマンションオーナーになっていた
だきました。
すべての手続きが終わった後、Aさんからは、オーナーになった喜びと共に、
「初めての不動産投資がこのような物件でよかった、以前の条件のままなら、
ずっと購入できないか、購入していればいたで相当苦労していたでしょうね。
本当にありがとう。」とのお言葉をいただきました。
もちろん、すべての投資家がアパートや1棟ものから区分物件に振り替えた方
がよい、などとは言いません。
ただ、私たちが感ずるのは、投資に代表されるようなお金に絡んだことは、そ
の単位が大きすぎると出来るはずの判断ができなくなるといった具合に、ちょ
っと変なことになるケースがあるということです。
そんな時はAさんもそうであったように、一人で考えるより誰かに自分の考え
を話してみると整理がつきやすいのかもしれません。
その際は、Aさん同様に私たちをご指名いただければと思います。