不動産の基礎知識

2011-02-11

『「2011年住みたい街ランキング」から読み取れること』

毎年恒例の「2011年住みたい街ランキング」が、先月25日に東京ウォー

カーにて発表されました。

YahooやGoogleなどの検索エンジンのトピックスにも取り上げられていました

ので、既に目にされた方も多いと思いますが、大変興味深いランキング結果が

出ていますのでご紹介させていただきます。

 

「住みたい街ランキング」とは、東京ウォーカーの読者投票により「住みたい

街」「住んでよかった街」をランキングしたものです。

本誌では各30位までのランキングを発表していますが、ここではそれぞれト

ップ10の街をご紹介いたします。

 

 

■住みたい街ランキング(カッコ内は昨年順位、10位以下は-と表記)

 

1位  吉祥寺 (1)

2位  下北沢 (3)

3位  恵比寿 (4)

4位  自由が丘 (2)

5位  新宿 (10)

6位  池袋 (-)

7位  浅草 (-)

8位  中目黒 (5)

9位  代官山 (8)

10位 中野 (9)

 

 

■住んでよかった街ランキング

 

1位  中野 (2)

2位  高円寺 (9)

3位  吉祥寺 (1)

4位  池袋 (3)

5位  練馬 (-)

6位  新宿 (-)

7位  三軒茶屋 (7)

8位  葛西 (-)

9位  目黒 (-)

10位 立川 (-)

 

 

まず、住みたい街ランキングに関してですが、多少の順位の変動はありますが

大きな変化はなく、昨年の10位以下からは2つの街のみがランクインしてき

ました。

1つは「池袋」ですが、新宿、渋谷等と並ぶビックターミナルですし、昨年の

住んでよかった街ランキングの3位に入っているので予想外ではありません。

 

ここで注目すべきは7位の「浅草」です。

住みたい街ランキングには、全ての街が全国レベルで有名で誰もが一度は憧れ

る、文字通り住んでみたい街が並んでいます。

では、なぜいわゆる下町である「浅草」がランクインしてきたのでしょうか?

 

実は今、下町の人気が上がってきているのです。

東京ウォーカーでもプロに聞いた注目の街として、浅草や押上、亀戸など東京

の東側エリアが紹介されているのですが、人気の理由としては以下のようなこ

とが書かれています。

 

①利便性が高い割に賃料が安い

②若者には下町(商店街)の雰囲気が新鮮で魅力的

③東京スカイツリーの開発による今後の発展

 

つまり、利便性は都心にそれほど劣らないのに、商店街が充実していて、さら

にはスカイツリーのような新名所の近くに“安く”住めるエリアということで

人気が出てきているようです。

 

「浅草」がランクインしたのは、東側エリアの中でも特に利便性が高い(浅草

線、銀座線)上に、知名度も抜群で、商店街の充実度も高い街だからだと思わ

れます。

 

このように賃料は安いけど生活利便性の高いエリアを好む傾向は、長引く不景

気が大きく影響していると思われますが、この傾向は「住んでよかった街ラン

キング」ではより顕著に見られます。

 

特に「住んでよかった街ランキング」のトップ10に入った街で、個人的に意

外だと感じたのは、練馬、葛西、立川の3つの街ですが、皆様も同様に思われ

たのではないでしょうか。

 

それぞれの共通点は(もちろん程度の差はありますが)、都心から離れている

ため利便性は低いけれど、生活環境が良く、賃料の安いエリアという点です。

前述の東側エリアを好む傾向と同じです。

 

15位までのランキングも見ても、

11位 大井町

12位 府中

13位 町田

14位 新小岩

15位 蒲田

と、11位の大井町以外は、都心から少し離れた生活環境の良い街がランクイ

ンしています。

 

住みたい街ランキングに入るような憧れの街には、誰もが住みたいと思ってい

ます。

しかし、長引く不況の影響で、賃料の高すぎる憧れの街には住むことができな

いため、多少都心から離れたとしても、賃料が安くて生活環境が充実している

エリアを好む若者が増えてきているようです。

 

『賃貸が強いエリアはどこですか?』とお客様によく聞かれます。

賃貸が強い=需要が高い=賃料が高いエリア

と考えるのが普通だと思いますが、現在のように不況が長く続いている状況や、

ランキングに表わされる傾向などを考えると、それほど単純なものでもなく、

以下のように考えを修正する必要があると感じています。

 

賃貸の強いエリア=【賃料】×【利便性(立地)】×【生活環境】

 

この3つの項目のバランスが良いエリアが、賃貸が強い(賃貸付きが良い)エ

リアと言えるのではないでしょうか。

 

実際に今の賃貸市況を見てみると、港区のような都心のど真ん中で利便性(立

地)が良く、人気のエリアであっても、賃料の高い物件は数ヵ月空室が続くと

いうことも珍しくありません。

 

この不況下では、高い賃料を支払える人が少ない=賃貸が付きづらい、という

現象が起きているのです。

もちろん賃料を下げれば賃貸は付くのですが、それでは投資目的で購入した場

合、当初の予定利回りを大きく下回ることになってしまいます。

 

それとは反対に、都心と比べると利便性(立地)が多少劣ったとしても、賃料

が安く、商店街が充実しているなど生活環境の整ったエリアの物件は、前述の

「住んでよかった街ランキング」が示すように、現在のような不況下では人気

が出てくる傾向にあります。

しかし、このような現象は好景気になればまた変わってしまい、状況が逆転す

る可能性があります。

 

不動産投資は、長期間安定した賃料(インカム)が得られるかどうかにかかっ

ています。

 

【賃料】×【利便性(立地)】×【生活環境】

 

この3項目のバランスが良い物件を選ぶことができれば、20年、30年とい

う長期に渡って何度も繰り返し襲ってくる好景気、不景気の波にも負けずに、

安定した収益が得られるのではないでしょうか。

 

利回りが高くキャッシュフローが良かったからというような数字上の判断では

なく、その物件(エリア)が持つ特徴をしっかり掴み、総合的な判断で物件を

選定していただきたいと思います。