不動産の基礎知識
2009-12-11
『マンション投資を考える② ~修繕積立金における一例~
10月15日のコラムで、実質利回りだけでは判断できないマンション購入の選
定ポイントを、「管理費」を例に挙げてお伝えしました。
今日はその第2弾として、「修繕積立金」について考えてみたいと思います。
そもそも修繕積立金とは、マンションの外壁塗り替えなど、共用部分の大規模
修繕工事のために、前もって少しずつ積み立てておくものです。
積立金は長期修繕計画(新築時に必要な費用を予測して毎月の金額を設定し、
積み立てていく計画)に基づいて毎月徴収されます。
よって、実質利回りを求める場合は、管理費と同じように経費として家賃から
引かれるので、修繕積立金が安いほど実質利回りは高くなります。
しかし、「毎月の修繕積立金が安い方が実質利回りは高いけど、ずっと安いま
まだとどうなるの?」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
例えば、以下のように3パターンの修繕積立金の積立方法があるとします。
A.最初からある程度高い水準で積み立てる
B.最初は低く、以後は段階的に上げて積み立てる
C.最初からずっと低い水準で積み立てる
仮に積立期間を15ヶ月とし、以下のように積立金を設定します。
A.毎月3,000円
B.1,000円→2,000円→3,000円(5ヶ月毎)
C.毎月1,000円
この場合のそれぞれの15ヶ月後の積立金額は、
A.45,000円
B.30,000円
C.15,000円
さらに、積立期間を5年(60ヶ月)とすると、
A.180,000円
B.120,000円(20ヶ月毎に金額をあげるとする)
C. 60,000円
となります。
これだけを見ても、AとCの大幅な金額の差は歴然です。
これがさらに10年、20年と続いていくと考えると、どうでしょうか。
実質利回りで見れば、もちろん利回りが高い順はC→B→Aとなります。
しかし、多くの方が何十年と所有することになるであろう中古マンションにお
いて、将来の大規模修繕に向けての積立金がプールされていないというCの状
況は、不安材料になるのではないでしょうか。
少なくとも、A B C が同じような条件のマンションで、その中からCを購入す
る場合は、大規模修繕時の大幅な費用負担というリスクをある程度考慮しなけ
ればならないことになります。
ただ、これはあくまで一つの例であり、「修繕積立金が安いから悪い」という
わけではありません。
例えば戸数が多いマンションであれば、スケールメリットがありますから、比
較的安い金額でも不足なく積み立てられている可能性もあります。
重要なのは、「修繕積立計画がきちんと立てられ、かつ適正な金額で積み立て
られているか」ということです。
こういったことからも、たとえそれが実質利回りだったとしても、簡単にその
数字だけでは判断できないマンション投資の奥深さが見えてきます。
実質利回りを計算する上で、影響を与える要因は他にも幾つかありますが、修
繕積立金一つをとってもこれだけの考察ができる、と捉えることができるので
はないでしょうか。
どんな物件を選ぶかはもちろんご投資家個人個人で違っていいと思いますが、
購入後に「やっぱり買うんじゃなかった…」と後悔しない選択をしていただき
たいと思います。