マンション投資の注意点
2017-07-28
金融機関の“融資姿勢”も不動産投資の成功を左右する!?
先月末、週刊ダイヤモンド「不動産投資の甘い罠」
が話題になりましたね。
アパート経営や新築ワンルーム、中古ワンルームマンションなど、
不動産投資全般について、ネガティブな側面が細かく解説されて
いました。
すでに不動産投資を実践されている方にとっては、納得できる部分
とそうではない部分が、また、検討を進められている方にとっては
不安が頭を大きく擡げ、検討を進めて良いものかどうか悩まれてい
る方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
記事内では主に、不動産投資のリスクに焦点が当てられていましたが、
誤解を招くような表現も見受けられたことから、雑誌が発売された直後、
多くの不動産会社、不動産投資家がメルマガやコラム、ブログなどで
記事の内容について様々な見解をされていました。
ご承知の通り、貸家業に融資をするアパートローンの
貸出残高は増え続けています。
ダイヤモンドでは、「アパートローン急増!警鐘を鳴らす金融庁・
日銀」というタイトルで特集されていましたが、実はこの話、
4月18日の不動産業界の業界紙『住宅新報』でも、「過熱する
アパートローン 金融機関と住宅メーカーに警鐘」というタイトル
で掲載されていました。
国土交通省が3月に発表した「民間住宅ローンの実態に関する調査」
によると、2015年度に金融機関が行った賃貸住宅向けの新規貸出
金額は3兆6,653億円、前年比8%の増加となっています。
また、その新規貸出額の上位金融機関は、
1位 地方銀行:1兆5,762億円
2位 信用金庫:8,025億円
3位 都市銀行:5,586億円(信託銀行等含む)
日本銀行の調査による「個人による貸家業」への2016年
12月末時点の貸出残高は22兆1,668億円。
前年比4.9%の増加となっています。
日銀の統計が開始された2010年3月末以降、
大手都市銀行の貸付残高が減少するなか、地方銀行の
貸付残高は1.5倍に増加しています。
背景として、マイナス金利政策のなか、預金に占める
貸出金の割合が低下し、金融機関、特に都市銀行と比べて
財政基盤が脆弱な地銀が、担保を取りやすい不動産への
融資姿勢を強めていることが影響しているようです。
さらに2015年の税制改革により、相続税の基礎控除が
4割ほど低くなったことで、相続税の課税対象者が急増
したことが挙げられ、続税対策として資産をアパートなど
の貸家に置き換えることで、相続税評価額が半分近く減る
こともあり、大手を含めた住宅メーカーが販売攻勢をかけています。
ダイヤモンドでは、その住宅メーカーが名指しで
取り上げられていました。
その結果、国土交通省の新設住宅着工戸数の調べによると、
2016年の新設住宅着工戸数は967,237戸、
うち貸家は418,543戸と半数近くまで迫っており、
前年比10.5%の増、5年連続の増加となっています。
ただし、この問題は単に“融資残高が増えている”
ことが問題、というわけではありません。
一番の問題点は、その“融資姿勢”がしっかりとして
いないのではないか、これが金融庁・日銀が警鐘を鳴ら
す一番の理由です。
貸家業における融資は主に、その不動産の将来にわたる
収益性を見込んで融資を行うのが一般的です。
例えば、弊社が中古のワンルームマンションを仕入れる際には、
立地条件(エリアや路線、駅からの距離など)、物件全体の仕様、
部屋内の設備仕様、広さ、建物管理状態、マンションブランドなど、
細部に渡って調査を行い、入居者に選定されやすく、中長期的に
安定収入を確保しやすい物件選定を心掛けています。
またグループ会社の賃貸管理会社と連携し、設定されている家賃と
周辺相場に乖離がないか、しっかりと家賃査定を行い、物件のポテン
シャルについても調査を行っています。
そして、提携金融機関に対してもそれらの物件資料を全て提出し、
担保評価の判断を仰ぎ、各提携金融機関の担保評価がしっかりと
出る物件のみを仕入れています。
その一方で、地銀や信金の融資姿勢には疑問が残ります。
ダイヤモンドで地銀・信金が融資する物件に対する
調査状況(日銀「金融システムレポート」)がまとめ
られていましたのでご紹介します。
周辺の家賃相場調査 :実施42% 未実施58%
周辺物件の入居率調査:実施32% 未実施68%
人口動態を踏まえた需給動向調査:実施24% 未実施76%
この調査結果から、貸家業に対する融資審査の際、
その融資対象となるアパートの想定収益の妥当性や将来
にわたる安定性、継続性は考慮されていないケースも
あることが見て取れます。
実際、空き家の増加などにより当初想定の収益ラインを
下回り、事業継続が困難になるケースも出始めているため、
金融庁は将来的な不良債権化を危惧しているようです。
新規の貸家がどんどん供給されている状況であれば、
空室が増えるのは必然と言えます。
また、人口が集中している都心ではなく、郊外や地方
に建設されているのも問題と見ているようです。
賃貸需要が元々見込めないような土地にアパートが
大量に建設されれば、入居者の争奪戦です。
結果、空室を埋めるために家賃を下げざる得なくなり、
家賃を下げても返済額以上に家賃が取れていれば問題
ありませんが、状況によっては、返済が賄えない事態
に陥り兼ねません。
このような事態を想定した時に思い浮かぶのが、「サブ
リース契約」だと思いますが、ダイヤモンドでは「爆発
寸前のサブリース爆弾」と記載があった通り、サブリース
をめぐる訴訟なども起きています。
※弊社のコラムにて「サブリース契約」について
詳しく解説しています。
http://www.rebax.co.jp/2014/10/a-24/
本来であれば、将来にわたり保証されていたはずの賃料が、
数年~10年で大幅な引き下げを求められ、家賃収入が想定
ラインを下回ることで、収支が赤字に。
事業継続が困難になり、売却や任意整理を
せざる得ないケースが続出しています。
不動産会社に進められるまま、サブリースという事で安心し、
安易にアパートローンを組むオーナー側にも問題はありますが、
それと同時に、将来性や事業の継続性を担保としないでアパート
ローンをすすめる住宅メーカー、そして金融機関にも問題が
あるのかもしれません。
いずれにしても、アパートやマンション1棟を検討される
場合には、金額や賃貸需要等、総合的な判断が必要です。
利回りや収益額といった、目先の数字だけを見るのではなく、
将来にわたって安定した収益を生む、安定した資産であるか
をしっかりと見極められるよう、情報収集を怠らないように
するのが肝要です。